関西スクエアからのお知らせ

会員の寄稿

『ドクダミのこと』
上方文化評論家  福井栄一様

 5月ごろから咲き始める花の中に、ドクダミがある。
 一度聞いたら忘れない印象的な植物名なので、その語源をめぐっては、昔から諸説が唱えられてきたが、どれも決定打に欠けたまま今日に至っている。

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①ドクヲタム(毒溜)説:
群生地には独特の臭気が澱(よど)むので、「毒を溜める」の意。
②ドクヲタム(毒矯)説:
薬効成分が「毒を矯める(毒を抑える)」ことから。
③ドクイタミ(毒痛)説:
薬効成分が諸々の毒や痛みに効くことから。
④ドクトメ(毒止)説:
薬効成分が毒の作用を止めることから。

 まず①について少々、補足しておくと、ドクダミ特有の臭気は、ラウルアルデヒドおよびデカノイルアセトアルデヒドによる。ドクダミを日干しして乾燥させると臭気は消えるが、両者の制菌作用も失われてしまう。
 また、②、③、④を見ても明らかなように、ドクダミの薬効は古くから注目されていた。センブリ、ゲンノショウコと共に日本の三大民間薬として絶大な知名度と信頼度を誇り、解熱、解毒、動脈硬化予防、利尿などの目的で処方されてきた。生薬名「十薬(じゅうやく)」も、多くの薬効を有する故の命名であろう。
 ただ、このように優秀な薬草として人間の健康増進に多大の貢献をしてきたにもかかわらず、呼称に「ドク(毒)」の語が含まれるため、ドクダミ自体を毒草だと勘違いしている人もいまだに多い。ドクダミにとってみれば、やりきれない話である。

 ちなみに、ドクダミは種々の毒や痛みに薬効で抗するばかりでなく、自身もずば抜けた生命力を誇る。
 繁殖力は極めて強く、地下茎を伸ばして、みるみるうちに広範囲に繁茂し、他の植物を駆逐する。ジメジメした日陰であれば特に土質を選ばず生育し、特有の病気もない。苦手とする虫もほとんどいない。
 従って、薬草ではなく、自邸の庭にはびこる雑草としてドクダミに向き合うとなると、「今日の友は明日の敵」とばかりに、相当な難敵となる。地上に生え出た部分を懸命に引っこ抜いても、地下茎がわずかでも土中に残っていたら、早晩、再び繁茂してくる。

 なお、ドクダミの花言葉は「白い追憶」。名前に似合わず詩的だ。幼い頃、道で転んで出来た擦り傷に、揉んだドクダミの葉を母親が押し当ててくれた。そんな出来事を懐かしむことに由来する。
 今宵あたり、ドクダミ茶を飲みながら、母の大恩に改めて思いをいたしてみられては如何か。

(完)