
法話をする瀬戸内寂聴さん(左)と、秘書の瀬尾まなほさん=いずれも京都・嵯峨野の寂庵
11月27日の「中之島どくしょ会」は、瀬尾まなほさん(29)のエッセー『おちゃめに100歳!寂聴さん』(光文社、11月17日発売予定)が課題図書。瀬戸内寂聴さん(95)の秘書である瀬尾さんが、京都・嵯峨野の寂庵での暮らしをとおして、素顔の寂聴さんを描いている。「どくしょ会」には寂聴さんも登壇し、瀬尾さんと対談する。瀬尾さんは「かわいくて、優しくて、強くて、切に生きている先生の魅力を知ってほしくて、この本を書きました。どくしょ会でも先生の若さとエネルギーを感じてほしい」と話している。
今回の課題図書は、実は瀬尾さんにとって初めての出版となる。小説家志望でもエッセイスト志望でもない瀬尾さんが、なぜ、この本を書いたのだろう。そもそも、瀬尾さんってどんな人? 本人に語っていただいた。
寂庵で働くようになったきっかけは?
瀬尾 京都外国語大学を卒業と同時に寂庵に就職し、今年で7年目になります。先生が、よく行く祇園のお茶屋さんの女将(おかみ)さんに、「寂庵に若い子がほしいんだけど」という話をしたんです。たまたま私の高校の同級生がそこでお運びのアルバイトをしていたので、就職が決まっていなかった私を紹介してくれて。先生が面談して、即日、採用が決まりました。〝私は本をあまり読まない〟〝先生の本も読んだことがない〟と言ったのがよかったみたいです。先生いわく、文学少女は本ばかり読んでいるので、掃除も料理も下手だから使い物にならないって。
寂聴さんの秘書ってどんなお仕事なんですか。
瀬尾 作家としての先生の仕事をサポートしています。スケジュール管理、編集者とのやりとり、旅先でのスケジュール作りなどです。どこに行くのにも一緒についていきます。でも、ずっと束縛されているわけではなく、普段の勤務は午前9時から午後5時です。先生はすごく気を遣う人なので、遅くなると「早く帰りなよ」と言ってくれます。ずっと一緒にいるよりも、夜は一人にさせてあげることも大切ですし。
寂聴さんのファンなら気付かれたかもしれないが、実は瀬尾さん、寂聴さんの長編小説『死に支度』(講談社、2014年)に出てくる秘書・モナのモデルなのだ。エープリルフールに寂聴さんをだまして喜ぶモナのエピソードは、瀬尾さんの実話だとか。小説の最後に出てくるモナから先生への手紙も、実際に瀬尾さんが書いて渡したものが、ほぼそのまま使われているそうだ。
『おちゃめに100歳!寂聴さん』を書かれたきっかけは何だったのですか。
瀬尾 寂庵で発行している「寂庵だより」という新聞に、「まなほレポート」という文章を書いていたのですが、「すごくおもしろいので、本にまとめませんか」と出版社から話をいただいたんです。ですから、それをベースにして、私から見た先生の日々、私から見た小説家瀬戸内寂聴を書いています。
どんなことを書かれているのでしょうか。
瀬尾 先生いわく、「私の悪口ばかり書いている」って。いわば〝暴露本〟ですよね。でも、悪い風には書いてなくて、思わず笑ってしまう内容です。先生もゲラを読んで一人ですごく笑っていました。私が先生をだます話とか、先生が私と張り合おうとする話とか、書いています。先生はみなさんが思っているような遠い存在ではなくて、魅力的でかわいい人なんです。それが伝わればいいなと思っています。それから、高齢になってもデモに参加する理由など、私も涙が出そうになるような話も書いています。この本をきっかけに、先生の思想や生き方、たとえば戦争反対や原発反対、自分がおかしいと思ったことは声を上げ続けるとか、そういうことを知ってもらえればいいなと思っています。それと、なんてことのない私の人生が、先生との出会いによってこんなに変わるんだということ、そして、それは誰にでも起こりえるということも伝えたいです。
(構成 八田智代)
※今回の「どくしょ会」は、阪急百貨店「生活楽校」と関西スクエアのコラボ企画。会場もいつもの中之島を飛び出して、大阪・梅田の阪急百貨店「阪急うめだホール」で開催します。
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