7月11日 アサコムホールで開催 「北朝鮮情勢と日米関係」

特集

7月11日開催 講演会「北朝鮮情勢と日米関係」
佐藤武嗣編集委員

 朝日新聞記者がさまざまなテーマについて語る朝日新聞社講演会。今回は米朝首脳会談を受け、外交・安全保障が専門の佐藤武嗣編集委員が登壇しました。演題は「北朝鮮情勢と日米関係」。7月11日、アサコムホール(大阪市北区)で開催した講演会には抽選で選ばれた読者ら110人が佐藤編集委員の話を熱心に耳を傾けました。


以下は講演会抄録です。

 佐藤武嗣と申します。93年に入社後、10数年、政治記者をやっておりまして、その後、ワシントン支局へ行きまして、トランプ氏が当選したときの大統領選を取材しておりました。


satou-main.jpg

 前回講演も北朝鮮がテーマで、そのときは弊社の元ソウル支局長で論説委員が講演をさせていただきました。私もテーマは同じですが、日本の政治あるいはワシントンでアメリカの政治を見てきた者として、アメリカから見た場合の米朝会談というテーマに焦点を当ててお話しさせていただきたいと思います。


 まず、トランプ大統領がなぜ金正恩委員長と会談に臨むことになったのかということ、それから、今の日米関係、今後の日朝の見通しについてお話をさせていただこうと思います。


medal-.jpg

 最初に、これはアメリカ政府が発行したメダルです。このメダルを発行したのは米朝会談が実現する前で、トランプ氏が一時期、6月12日の日程をキャンセルしましたが、その前にこのメダルを発行していました。トランプ大統領とホワイトハウスが米朝会議に気合いを入れていたことが、わかると思います。


 金正恩委員長の肩書きがSupreme Leaderと書いてあるんですね。普通は、朝鮮労働党委員長ですから、英語で言うとChairmanですが、このメダルには最高指導者と書かれていて、金正恩氏を持ち上げる、その気にさせるようなアメリカの意図があると思います。


 米朝会議の行方を占うに当たって、トランプ大統領の性格や政治的手法を知ることが不可欠だと考えております。


「アメリカ ファースト」

 まず、彼が政策として訴えているのは、アメリカ第一主義といわれます。これまでアメリカは世界を牽引してきたけれども、同盟国をはじめ、貿易相手国からいいように利用されてきた、この貿易不均衡を解消してアメリカの国益を取り戻さなければいけないと。関税の問題等々もそうですが、彼はブルーカラー、いわゆる労働者を対象にこういった主張をしております。過去のアメリカの大統領、共和党政権の大統領、ブッシュ大統領も含めて、レーガン大統領以外を彼は批判をしておりまして、政治経済を牛耳ってきた一部の特権階級層に対しての批判を強めることで、ブルーカラーの人たちからの支持をとりつけてきたというのが、彼の政策の特徴であります。


 そして、イスラム教徒あるいは不法移民に対して非常に強硬な発言および政策をとるというのが2番目の特徴です。選挙期間中にイスラム教徒のアメリカへの入国を拒否するべきだと、あるいは、寺院を監視対象に置くべきだと主張しました。犯罪などに対して、不法移民、イスラム教徒を敵視することで保守の白人層の支持を集めてくる。これら二つが、トランプ氏の政策の大きな特徴と思います。


 今度は政治的手法ですけれども、非常に自己顕示欲が強いです。大成功した実業家からテレビのトップスター、さらにはアメリカの大統領にまで上り詰めた、私は賢いというよりは天才という証拠だとツイッターなどで言っておりました。


 

 もう一つの特徴は、競争相手、ライバルをこき下ろす。例えば、ジョン・マケイン氏というアメリカの上院議員がいて、かつて大統領選に立候補しました。共和党の穏健派で、ベトナム戦争で従軍した経験があります。アメリカでは戦争のヒーローとして英雄視されています。彼はトランプ氏はアメリカ大統領候補らしくないと言って批判しました。そうすると、トランプ氏は「彼は戦争の英雄なんかじゃない。捕虜になって捕まったじゃないか。私は、捕まらないやつが好きなんだ」と言って、ジョン・マケイン氏にかみついたということがあります。ほかの大統領選のライバルたちに対しても「汗かき」「背が低い」。普通は言わないような、かなり口汚い言葉を使ってでも相手のイメージダウンを図る。これがけっこうきいて、ジェブ・ブッシュ氏など、共和党の有力候補が負けていった経緯があります。


 次に、北朝鮮に対してこれまでどういうことを言ってきたか。「北朝鮮は炎と怒りに直面するだろう」と、強い調子で軍事力を示唆したことがあります。しかし、米朝会談の直前になると「最大限の圧力という言葉は、これ以上使いたくない。俺らは、うまくやっているからな」と言う。  かつては「チビのロケットマン」と言っていたにもかかわらず、最近は「非常に聡明な指導者だ」と持ち上げた。手の平返しは彼の代名詞だということは覚えておく必要があります。


 日本に対しては、「日本は数百万台の自動車をアメリカで売りつけているのに、我々は何をしていたのか。東京でシボレーを見たことがない。彼らは、いつも我々を打ち負かしている」。東京で、たまにシボレーを見かけることがあるかと思いますが、事実関係はともかく、彼はそう主張して、貿易の不均衡に対して強い不満を表明している。対日貿易に対しては強硬なアプローチをとってきているし、これからもとるであろうと思われます。


 安保条約に関しては「アメリカと日本は安保条約を結び、日本が攻撃されれば米国は軍事力を行使しなければならない。だが、我々が攻撃を受けても、日本は何もせず、家でくつろぎ、ソニーのテレビを見ている。こんな合意って、あるだろうか」ということで、日米安保体制に関しても不満を述べました。これは事実ではありません。アメリカが攻撃され、日本本土も攻撃を受ければ、日本は反撃します。その辺の事実は、彼は気にかけていないということです。


 突き詰めると、アメリカ第一の政策をとっている。国際社会のルールづくりをアメリカはこれまで牽引してきたわけですが、現在は、ルールづくりというよりも、ルールを破る、アメリカの国益を正面に掲げて、他国を威嚇して、自分の国益になるように誘導していくというアプローチをとっているのが非常に特徴的であります。


 だいたいのアメリカのメディアは、左右を問わずトランプ大統領を批判しています。では、トランプ大統領の支持率はどれくらいなのか見てみましょう。


sizi-hp.jpg

 これが、トランプ政権が誕生してから現在に至るまでの、各社の支持率の平均値をとったものです。これは歴史的に非常に低い支持率です。政権が誕生したときの支持率が5割を切っているのは、歴代政権で初めてのことです。過去の政権は支持率が上へ行ったり、下へ行ったりしているのに対して、トランプ政権はいろいろな問題発言をしても、ほとんど支持率に響かないというのが特徴です。


 大統領選のとき、ヒラリー・クリントン氏は華やかな経歴を持ち、政策にも精通していますが、特権階級的なにおいがして気に食わないということなのか、例えばメールの問題が表に出ると、がくんと支持率が落ちる。クリントン氏がガラス細工の候補者と言われていたのに対して、トランプ氏は期待値が低いせいか、何を言ってもほとんど支持率が下がらない、安定している。テフロン加工のトランプと呼ばれていて、この二人が争って、結局、テフロン加工が勝利しました。


 続いて、北朝鮮がこれまでの核ミサイル開発をどのように進めてきたかということを簡単におさらいしておきたいと思います。


 ミサイルの発射回数は金正恩になって、ペースをぐんぐんと上げてきています。ミサイルの能力も向上しています。北朝鮮が昨年末に撃った火星14号、火星15号はサンフランシスコ、アラスカを射程におさめるほど射程距離を伸ばしているということです。


 核開発はどう進んでいるかというと、北朝鮮はこれまで6回の核実験をやっております。核実験で使った核の威力もどんどん大きくなってきています。


 アメリカにとってみると、北朝鮮が核を持っていても、自分のところへ届かなければ脅威にはならない。逆に、核を持たなくて、飛距離だけを伸ばしてきても、被害は限定的ですが、核の能力を増大化しつつ、しかも飛距離を伸ばしてくることについては、アメリカとしては非常に脅威と感じてきている。それゆえ、トランプ政権としても対話の必要性を感じているということであります。


 次に、6月12日に行われた米朝首脳会議の合意内容についても、おさらいをしておきたいと思います。


入らなかったCVID

 まず、北朝鮮の完全な非核化への揺るぎない決意というものを合意文書で約束をして、それに対してトランプ大統領は、北朝鮮に安全の保証を提供することを約束しております。  CVIDという言葉があります。完全(Complete)・検証可能(Verifiable)・不可逆的(Irreversible)・非核化(Denuclearization)です。CVIDが今回の合意文書に入っておりません。その代わり、完全な非核化という言葉を使っている。


 一見、同じような言葉にとれますけれども、CVIDのC、Completeしか入っていない。検証可能と不可逆的かどうかが入っていないというのは、今回の合意について不十分ではないかと指摘される点であります。


 一方、アメリカ側が北朝鮮に安全の保証と言っていますけれども、北朝鮮側の約束があいまいであるのと同様に、アメリカ側も、どういう形で北朝鮮に安全を保証するのかということに関しては触れておりません。あいまいに対してあいまいに返しているというのが、今回の合意の特徴です。


 もう一つ、北朝鮮は朝鮮半島の完全な非核化に取り組むことを約束する。「朝鮮半島の完全な非核化」という言葉を使って、アメリカもそこにサインをしているわけですが、北朝鮮の完全な非核化と、朝鮮半島の完全な非核化というのは、ニュアンスが違います。アメリカからすれば、朝鮮半島の非核化というのは、当然、北朝鮮が核を放棄する、非核化に努めるということで解釈されますし、北朝鮮から見ると、どう解釈されるか。かつて、アメリカは韓国に核を持ち込んでいました。ですから、過去にやったようなことはないだろうというのが、朝鮮半島の非核化です。もう一つ、核を搭載した原子力潜水艦を北朝鮮沿岸に近づけることもやめろというのが、北朝鮮が思っている、朝鮮半島の完全な非核化ということです。同じ文言ですけれども、アメリカと北朝鮮の間では大きな認識の差があると言えるのではないかと思います。


 また、合意文書を出した同じ日に、トランプ大統領が単独で記者会見を開きました。そこで表明したのは、北朝鮮がアメリカと交渉をしている間は、米韓合同軍事演習を行わないということです。その代わり、北朝鮮はミサイル燃焼実験、その施設を破壊することをアメリカに約束したのだと。さらには、在韓米軍の兵士を帰したいと。今ではないけれども、将来はそうしたいと言って、在韓米軍の削減にも触れました。


 さらにつけ加えて、非核化のコストは、恩恵を受ける韓国と日本が支払うと。日本の許可もなく、日本が支払うと。外務省に確認しましたけれども、これに対して日本政府が抗議したり、真意を確認するということは、どうもなかったようであります。


 合同軍事演習を行わないということと、北朝鮮がミサイル燃焼実験施設を放棄するということが取引材料になっているわけですが、こういう取引材料がいいのかという議論があります。なぜかというと、米韓合同軍事演習というのは国際的に認められた軍事演習です。ところが、北朝鮮は国連決議を破って核ミサイルを開発している。


 もともと中国、ロシアが、北朝鮮の核ミサイルを中止させるにはアメリカと韓国が合同軍事演習をやめるべきだと主張していて、これをアメリカと韓国は拒否していました。なぜかというと、国際法違反の行為に対して、国際的に認められたものとの取引はよくないと。こういう取引を許せば、国際社会の約束を破って、アグレッシブなことをやればやるほど得になるという、いわゆるゴネ得の事態になりますので、アメリカはそういうやり方には応じず、米韓合同演習をやってきたわけですが、今回は、これを中止することにしております。


yoron-hpjpg.jpg

 次に、今回の米朝首脳会談に対して、アメリカ国民の世論がどう反応しているかということです。これはキニピアック大学の世論調査、正確だということで定評のある、権威ある世論調査の機関ですが、ここが米朝首脳会談の評価を聞いています。


 「米朝首脳会談に成績をつけたら、どうですか」と。アメリカの成績というのはこうなっていて、A、B、C、D、Fとありますが、Aは「大変よくできました」、Bは「よくできました」、Cは「まあまあ、平均点」、Dは「頑張りましょう」、Fは落第と。この成績をつけるとしたらどうかという質問です。


 Aが25%、Bが17%、「平均だ」が15%、「頑張りましょう」が14%で、落第が20%ということです。前向きに今回の会談を評価しているのがCまでとすれば、57%の人が今回の会談を評価しているということになるかと思います。共和党支持層の中で見てみると、Aが53%、過半数です。Bが28%、Cが7%、前向きの評価ということで言うと、88%の人が今回の米朝首脳会談を評価している。Dが1%で、Fが2%。一方、民主党支持層で見ると、DあるいはFの落第と見ている人が圧倒的に多くて、Dが23%Fが43%ということです。


 なぜ、政党別の数字をあげているかというと、トランプ大統領は「全体」の支持率はあまり気にかけていないからです。自分の支持者である「共和党」支持層がどう反応しているのかにトランプ大統領は注目しています。


 次に「米朝首脳会談で、アメリカと北朝鮮、どちらが得をしたと思いますか」という質問ですが、「どちらもが得をした」というのが過半数、「アメリカのほうが得をしたんじゃないか」というのが7%、「北朝鮮の利益のほうが大きかったんじゃないか」というのが33%。ただ、共和党支持層で見ると「どちらもが得をしたのではないか」というのが圧倒的ですが、「アメリカが得をした」というのが15%。対して、民主党支持層で見ると「どちらもが得をしたのではないか」というのが40%で、「むしろ、北朝鮮に有意だったんじゃないか」というのが過半数を超えて、53%ということです。


 「将来的に北朝鮮は核兵器を放棄すると思いますか」という質問に「放棄する」は26%、「そうは思わない」は59%。かなり悲観的に見ています。ただ、共和党支持層で見ると、「放棄する」が49%です。


 次に、トランプ大統領はノーベル平和賞に「値する」が27%、「値しない」が66%。共和党支持層で見ると、58%の人がノーベル平和賞に値すると思っているということです。


 トランプ氏は、イランの核合意から一方的に離脱を発表しましたし、さらにイスラエルのアメリカ大使館をエルサレムに移転して、デモが起きて数十人が亡くなるということもありました。私から見て、ノーベル平和賞にはほど遠いんじゃないかと思いますが、共和党支持層の中では「いや、たいしたことをやった」と見ている人が多い。


 特にトランプ氏が北朝鮮にこだわる理由としては、過去の大統領がやったことのないこと、これは北朝鮮の最高指導者との会談であって、自分はこれをやったのだということで、彼にとって北朝鮮問題は最優先課題であって、支持者にアピールできる材料として考えているのは明らかだと思います。


 一方、米朝首脳会談に対して日本の世論はどう評価しているか。これは朝日新聞の調査ですけれども、「米朝首脳会談を評価する」が73%、「評価しない」が19%。ただ、核兵器を北が放棄すると思うかということに関しては、ほぼアメリカと同じトレンド、むしろアメリカ国民よりもネガティブで、「期待できる」が26%、「期待できない」が66%です。


特異な外交アプローチ

 トランプ氏の外交を見ていると、非常に特異なアプローチをとっていると皆さんも感じておられると思います。伝統的な外交は国の指導者が大きな方向性を示して、それに基づいて事務方がカウンターパートの国と妥協点を探る。その中で、何は譲れて、何が譲れないかというところをギリギリ詰めながら、ある程度まとまってきたら、それを閣僚級に上げる。閣僚級でさらに細部を詰めて、今度はいよいよ合意だという段階になったときに首脳が出ていってサインをする。これが通常の外交のプロセスです。ところが、トランプ政権はどうやっているか。まったく逆のアプローチで、事務方の詰めはない。


 トランプ政権を支える事務方。日本とアメリカの官僚システムは違っていて、アメリカの場合、政府の一部の高官は上院での承認を受ける必要があります。例えば国務省の幹部ポスト、大使などの役職が1,000幾つかあったかと思いますが、そのうち、まだ承認を受けていない、あるいはトランプ自身が指名をしていないポストが7割です。今回の北朝鮮を担当するアジア太平洋の国務次官補というのも、実は、まだ決まっておりません。こういう状況でトランプ外交が展開されております。


 ただ、通常の外交的アプローチでは、おそらく今回の米朝会談は実現しなかっただろうと思います。下から積み上げるといっても、お互いに上の顔色を気にしながら、ギリギリ最後まで詰めることは米朝の間では困難だと思われます。昨年末は軍事的緊張が高まって、本当に軍事衝突があるのではないかと言われていましたが、今回の米朝首脳会談が実現したことで、少なくとも、しばらくは軍事的衝突が遠のいたと言えるかと思います。


 もう一つ、今回、米朝会談を行ったことで、北朝鮮は核実験をやっていない、ミサイルも発射していない、しかも、将来的に査察を受け入れる可能性もあるということです。アメリカが気にしているのは、自分に対して撃たれることもそうですが、北朝鮮から第三国に核が渡ることも非常に恐れていまして、今回の合意によって、核拡散を止めさせるだけの効果はあるだろうと。トランプ外交のメリットと、あえて言えば、こうした点が上げられると思います。


 では、どういうデメリットがあるか。先ほども少しお話ししましたように、下から積み上げていった協議ではないので、合意内容も実行可能性もあやふやだということです。とりあえず会って、できるところから合意をしたという内容になっているということです。


 もう一つ、トップ同士で合意をした。合意をするのはいいけれども、その後クラッシュした場合どういうことが起きるかというと、一気に軍事的緊張が高まりかねない。大統領までが出ていって、そこでの約束が反故にされたというと、選択肢としては非常に限られてくるわけで、外交努力よりは、軍事的手段もやむを得ないのではないかという国内世論も高まるだろうと。反動として軍事的緊張が高まりかねない、そういう危険性があるということです。


 3点目は、トップ同士で合意するので、北朝鮮側は「上で話をしてトランプから譲歩を引き出せるなら、ここで無理をして、アメリカのカウンターパートとギリギリ詰める必要はないんじゃないか。全部、トップへ持っていって、トランプ大統領をそこそこだましながら合意すればいいんじゃないか」ということで、事務方が協議をサボタージュする可能性があるかと思います。


 現にそういう兆候は出てきていまして、このあいだポンペオ氏が行って、北朝鮮側に不満を述べていましたが、そういう形で実務者協議がサボタージュされる可能性があることがデメリットとして上げられると思います。


 そして、トランプ外交というのは、彼の念頭にあるのは自分の支持者ですから、支持者の意思あるいは世論に左右されやすいということも、デメリットとして上げられるかと思います。


 今後の北朝鮮問題の見通しですが、トランプ大統領は予測不能というのが代名詞ですから、トランプ政権はこうなると予測した政治学者は後で恥をかくのが常です。ここではあえて、私も予測をしてみたいと思います。


shinario-hp.jpg

 まず、一番あってほしくないシナリオですけれども、軍事的緊張が再び高まるということ。米朝会談の折衝はこの後もギリギリやっていくと思いますし、アメリカの中間選挙が11月にありますので、そこまではトランプ大統領も支持者に向けて「俺は北朝鮮問題でこんなにやったんだ」とアピールしたいでしょうから、少なくともそこまでは、ずるずるとやっていくでしょうが、その後、北朝鮮側がアメリカの足元を見て、過去にやってきたような挑発行為に逆戻りする可能性がなきにしもあらずだろうと。


 アメリカ国内で対北強硬論が非常に高まれば、トランプ大統領も強い姿勢を示さざるを得なくなります。過去に、アメリカの政権内で限定攻撃が検討されました。限定攻撃というのは、ある種、お灸をすえるということで、「こういうことをやったら、本当にやるぞ」という本気度を示すという意味で、一部の核ミサイル施設を限定的に攻撃する。それによって、北朝鮮にこれ以上の挑発行為をしないように牽制をするのが限定攻撃のねらいです。


 これに対して北朝鮮が「これは、アメリカがお灸をすえようとしているんだな」と認識すれば問題ないんですが、なぜアメリカが限定攻撃に踏み切れないかというと、北朝鮮が「アメリカは、自分の体制を壊しにかかっているな」と踏めば、過剰反応をして、韓国あるいは日本に向けてミサイルを撃ってくる可能性がある。必然的に全面戦争になります。こういったことから、軍事的オプションということになると、難しい選択肢を迫られることになるわけです。


 米朝会談の前、軍事的緊張が高まっているときに、あるアメリカの学者にインタビューをして、軍事的衝突はどれくらい可能性があると思うかと聞きました。彼は5%と言っていました。なぜかというと、全面戦争に発展する可能性がある。そういう選択は、なかなかできないと言っておりました。会談後に再び会って、会談が実現したことで確率は減りましたかと聞くと、彼の答えは、軍事的衝突が起こる可能性は30%だと。軍事的緊張が高まっていた去年の年末よりも、衝突の可能性は高まったと彼は言っておりました。なぜかというと、トランプ大統領という最高指導者が出て行って交渉して、これが失敗した場合の選択肢は、おのずと限られてくる。やはり、緊張すればするほど、両方がそれを回避しようとして対話へ行くわけです。対話がうまくいかなくなると、一気に軍事的緊張が高まる。コインの表と裏であって、対話ムードになったからといって楽観視はできないというのが専門家の一致した見方です。


 2番目のシナリオ。これは、あいまいな非核化です。先ほど申し上げたように、完全な非核化といっても何を指すのかわからない。しかも、米朝合意の中で明確に合意をしているわけでもないということで、北がそれなりにサボタージュをしながら非核化に踏み切らないという状態ではあるけれども、核の施設を壊してみたり、ミサイルの施設を破壊してみたりということで、小出しにしています。アメリカ側も、中間選挙に向けて、細かいことには目をつぶって、まずは支持者に実績をアピールすることを優先させる。つまり、CVIDというものを先送りしながら、アメリカと北朝鮮が奇妙に連動して、ずるずると対話を継続していく可能性がある。


 ただ、このときの問題点は何かというと、国連決議で北朝鮮への制裁を科したわけで、これにはロシアも中国も賛成しております。しかし、いったん米朝会談で対話ムードが生まれて緊張が緩むと、既に中国は制裁について、表では「やっている」と言っていますけれども、実質的には緩んでおります。そういう中で、もう一度、仕切り直して制裁を強めようといっても、中国は言うことを聞かないと思います。そういう意味で、非常に難しい局面が訪れる可能性があると。 それから、中国か、どこかはわかりませんけれども、一部から経済支援を小出しにしていくようなことがあれば、北朝鮮は食い逃げをして、その陰で核ミサイルの実験をするという、いつか来た道をたどりかねないという懸念もあるかと思いますが、もやもやした状態で米朝の対話が進んだり、後退したりということを繰り返していく可能性があるというのが、シナリオの2です。


 この後は、どんどん楽観的になっていきますが、不安定な平和が到来するということです。つまり、北朝鮮がそれなりに非核化へのプロセスをこなしていく、それに対してアメリカも対価を与えていくことが、可能性としては考えられる。既にトランプは米韓合同軍事演習に加えて、在韓米軍の縮小・撤退の可能性にまで言及していて、今後それを交渉カードとして使っていく可能性があります。在韓米軍の削減というのは、遅かれ早かれ、やるだろうと私は思っています。3万人近い陸軍をあそこへ張りつけるだけの正当性というか、効果はあまりないとアメリカでも言われていて、おそらく、この米朝会談がなくても、在韓米軍は削減される方向だと。


 ただ、大規模な在韓米軍削減となると、韓国とアメリカの同盟関係はどうなるのか。アグレッシブな北朝鮮が存在するからこそ米韓同盟は強固であって、これは日本も同様で、慰安婦問題などで韓国と仲たがいをしているときも、北朝鮮がミサイルを撃ったときだけは、アメリカ・韓国・日本で団結してやろうと、まとまれるわけですが、北の脅威が薄れてくると、そういった同盟関係に見直しが図られる可能性はなくはないと思います。その場合、これまで中国は韓国のTHAADという高高度防衛ミサイルの配備について、強く批判をして、ロッテの不買運動をしたり、韓国に対してプレッシャーをかけていますが、米韓関係が弱くなってくると、こういったところで中国が米韓に対してさらにくさびを打ってくる可能性がある、北朝鮮もそれを利用する可能性があるということで、それなりに非核化が前に進んだとしても、これまで封じ込められていた問題がいろいろと浮上してくる可能性があるということです。


 4番目、これは夢のようなシナリオですけれども、ゴルバチョフ・シナリオと言われているものです。金正恩委員長が、かつてのゴルバチョフ・ロシアの書記長のように、北朝鮮の政治経済に抜本的な改革に着手していくというものです。


 北朝鮮の核とミサイルは、かなりの程度まで達成しています。核を搭載する形で、アメリカに届く弾道ミサイルもほぼ手中にしていると言われています。しかも、金正恩委員長は、父親あるいは祖父が実現することのなかった米朝会談も達成したということで、ある種、区切りがついたと。金正恩委員長はスイスへの留学経験があって、海外経験もあり、今回の米朝会談でシンガポールを視察した際も、発展の様子を興味深く視察したということです。そういう形で未来の国家づくりに動き出す可能性はあっても、どうなのかなと思っています。


 私があえて予測をすれば、おそらく2を中心に、ときに1へ行こうとしたり、あるいは3へ行こうとしたりということで、おそらく2を軸にして今後、推移していくのではないかなと思っております。


 次に日米関係であります。2016年12月、トランプ氏が大統領に就任した1カ月後、安倍総理がニューヨークのトランプタワーへトランプ詣でに行ってから、二人の仲は非常に良好です。日米首脳会談は8回、ゴルフも3回やっていると。電話会談に至っては、既に23回やっていると。日本の総理がアメリカの大統領とこのペースで電話会談をしたことは、おそらく過去にないでしょうし、アメリカから見ても、大統領が他国の首脳とこれだけの接触をするというのはないことです。


 では、トランプ氏は日本に優しいのかというと、決してそうではありません。安倍総理への親密な感情はあるものの、貿易問題等々では非常に厳しいです。北朝鮮の問題でも、日本への事前相談がまったくない状態で米朝首脳会談をする決断をしております。安倍総理にすると、はしごを外された格好で、どこまで仲よくやったら、そこまで聞いてくれるんだろうという感じではないかなと思います。


 あと、鉄鋼、アルミニウムに対しての追加関税を発動して、それは日本も除外していません。さらに、最近では自動車の関税を25%引き上げると言っていて、おそらく中間選挙に向けて支持者にアピールするために、自動車に対する関税について、これからちょくちょく持ち出してくる可能性はあるかと思います。


 とにかく、対日貿易に対しては赤字削減を要求していて、強固な姿勢をとってきているということで、日本政府としては北朝鮮のことでお願いに行きたいけれども、お願いに行くと通商交渉のほうで強く迫られるというジレンマにあります。


nittyou hp.jpg

 今度は日本の話です。日本がアメリカと北朝鮮が対話をすることに対してどういうスタンスをとってきたかということですが、去年の9月には、あらゆる手段を通じて北朝鮮への圧力を最大限まで高めていくということで、トランプ大統領と完全に一致したと言っておりました。必要なのは対話ではなく、圧力だと、国連の演説でもこう言っていました。対話のための対話は意味がないとも言っていました。


 ところが、3月8日にトランプ大統領が米朝会談をやりたいと意欲を示すと、翌日に安倍総理は「北朝鮮の変化を評価する」と言って、対話を評価する姿勢に転じた。その後、5月24日にトランプ大統領が書簡を出して、米朝会談のキャンセルを発表すると、即座に「トランプ大統領の判断を支持する」と。おそらく安倍総理は本音として、米朝会談をやってほしくないと思っていたので、アメリカが会談を中止したら「よし、よし」という感じで、世界に先駆けて支持をした格好ではないかと思います。


安倍総理も二転三転

 ところが、手のひら返しのトランプ大統領なので、6月1日には、米朝会談を予定どおり実施すると表明すると、安倍総理もそこにつき合って「期待したい」ということで、トランプ氏の二転三転につき合って、二転三転しました。


 安倍総理は米朝会談が実現することになった後、拉致問題あるいは北朝鮮との関係について、どういうことを言っているのか。拉致被害者家族からの要請というか促しもあると思いますが、北朝鮮と直接向き合って話し合いたいと。わが国も日朝平壌宣言に基づき、不幸な過去を清算し、国交を正常化し、経済協力を行う用意もあると。経済協力というところまで踏み込んで発言しています。


 こういった日本側のアプローチに対して、北朝鮮はどうレスポンスしてきているか。北朝鮮の国営メディアである朝鮮中央通信は「財布を見せびらかして、急進展する朝鮮半島問題に日本は一枚、かみたいようだ」と。朝鮮と日本の関係の基本は、「昔も今も、過去の清算だ」と。「日本が古くさい拉致問題をしつように持ち出し、騒いでいるのは、過去の清算を回避しようとする悪あがきにすぎない」と言っています。


 もう一つの国営メディア。「最近まで、対話のための対話は意味がないなどと気炎を吐いていたものが、突然、首脳会談の開催を主張し始めたことにあぜんとしている。過去の問題が清算される前に、我々は何も期待してはならない」ということで、安倍総理のアプローチに対してこういうレスポンスをしているというのが、今の日朝の現状であります。


 今後、もし日朝首脳会談をするとしたら、何がハードルになるのかというところを最後にお話ししたいと思います。


 一つは、核ミサイル問題。先ほど申しましたように、日本政府もアメリカと同様、CVIDの実現とミサイル開発の破棄を北朝鮮側に要求しております。ただ問題は、アメリカは、アメリカ本土に届くミサイルは困ると。当然、交渉の中ではそこを最優先に交渉します。そうなった場合、日本として困るのは中距離・短距離、ちょうど日本が射程に入るようなミサイル、こちらを忘れてもらってはいけないというのが日本の立場であります。


 ただ、米朝首脳で議論が進んでいった場合、中距離・短距離ミサイルまでアメリカが配慮して、そこまでをなくす交渉をしてくれるかというところが疑問です。アメリカ議会の公聴会で議員から同じような質問が出て、日本、韓国という同盟国が中距離・短距離ミサイルの射程内に入っている、この問題をどうするのだと聞かれたとき、ポンペオ氏は「日本と韓国は非常に大事な同盟国で、ここの同盟関係は揺るぎない。しかし、今回の米朝会談は、アメリカの国益を守るための会談である」と言っております。


 そうすると、やはり中長期的には、中距離・短距離ミサイルについての交渉は先送りされる可能性がある。ここは日本として、なかなか承服できないことになりかねないと思います。日本としては、あくまでも中距離・短距離ミサイルの開発中断の確証がない限り、経済支援はできないと言っております。


 次に拉致問題です。拉致が解決しない限り、経済支援は行わない。拉致問題は、核・ミサイルと並んで日本政府の最も重要なプライオリティであると言っていて、拉致が解決しないと北朝鮮との交渉も本格化しないし、まして、お金を出すことにはならないと主張しています。


 ただ、拉致問題の解決といったとき、解決が何を指すのか、ここが非常に不透明であります。日本政府がリストとして上げている全員が戻ってくれば、それは解決と言えるでしょう。でも、そうでない可能性もあるわけです。仮に北朝鮮が誠意を持って対応したとしても、そうならない可能性も、なくはない。そういった場合、日本政府としてどう対応するのか。外務省の人が言っていたのは、拉致問題の交渉の箱を開けたとき、日本政府にとっては必ずしもいい結果になるとは限らないと。政治的リスクを伴う。おそらく安倍官邸は、9月の自民党総裁選まで、この箱を開けようとしないだろうと言っておりました。安倍総理は、これまで北朝鮮に対してずっと強いスタンスをとってきましたので、柔軟な姿勢を示しにくいところがあるというのが、課題だろうと思います。


 拉致問題に関しては、トランプ大統領、あるいは韓国の文在寅大統領、北朝鮮側との交渉の中で拉致問題を議題として取り上げたとは言っておりますが、交渉自体は日本が主体的にやってくれというのが彼らのスタンスであります。


 それから、日本の最大の武器である経済支援に関しては、二つの経済支援があります。一つは、北の核開発を放棄することに対する、ある種の対価として与える支援。もう一つは、日朝平壌宣言でも語られているように、日朝が国交正常化した後の、援助も含めた大規模な支援。この二段階の経済支援があります。


 あくまでも、拉致と核・ミサイル、すべてを解決しなければ、この二段階目の大規模支援はできないというのが日本側の立場ですが、アメリカは、トランプ大統領が「金は日本が払う」と言っていますので、アメリカは対北朝鮮の交渉カードとして日本の財布に期待をしているというのも事実です。この辺で、日本がアメリカと協調しながら、あるいは北朝鮮と協調しながら、どういうふうに経済支援のカードを切っていくのかということが今後の課題になってくると思います。


日朝交渉 いつアクセル

 それから日朝の交渉のアクセルを踏むタイミングは、いつがいいのか。これは非常に難しい問題です。先ほども、北朝鮮の反応を見ておわかりのように、今、早期に日朝交渉にアクセルを踏もうとしても、おそらく北朝鮮側は乗ってこない。これを強引にやろうとすると、北朝鮮が反発を示して、日本の孤立感を国内外に印象づけてしまう可能性がある。そういう意味では、急いでやろうとしても安倍政権にとってマイナスになる可能性があります。


 では、趨勢を見きわめて、各国の議論を見きわめて、「どうせ自分の財布に期待しているのだから、最後は俺のところに来るだろう」という姿勢で臨むというのも、アプローチとしては、ありかなと思います。ただ、そうなった場合、本当に、最後に日本が強い交渉ができる立場にあるのか。おそらく、この協議はアメリカ、韓国、北朝鮮の三者、あるいは中国も加えた四者が軸になってくると思います。現段階で、日本はそこにはなかなか入れない。完全に、米中南北という四者の枠組みで協議が整った後、「じゃあ、日本は金を出してくれ」と、アメリカも含めて言ってきた場合、安倍総理は「拉致も含めて解決しないと、俺は金を出さない」と言えるのかというところがあります。


 ですから、最後まで見きわめようとして、指をくわえて待っていると、これも難しい状況に追い込まれるということで、この中間の段階でアクセルを踏まなければいけないわけですが、それがいったい、いつになるのかというのが難しい。先ほど外務省の人の話を紹介しましたように、おそらく総裁選までは劇的に動くことはないと思います。その後、どういうタイミングでアクセルを踏んでいくのかということは、日本としては非常に難しい選択を迫られる可能性があるかなと思っております。


 本日は、予測不能のトランプ大統領を含めて、今後の米朝会談を占うという話ではありましたし、私自身、自分の見立てが正しいかどうかという確証はありません。ただ、今後の米朝交渉、あるいは日朝交渉のニュースを皆さんがフォローするに当たって、考えるヒントになればと思っております。


会場からの質疑応答

zennkei-hp.jpg 【会場から】 北朝鮮問題はアメリカ、ロシア、中国、それに加えて日本、北朝鮮、韓国の6カ国が北東アジアサミットというか、そういう形の首脳会談を開くべきだと思うんですけれども、この辺の実現性とか可能性はいかがでございますか。

【佐藤】 今後の協議の枠組みがどうなるのかというのは、まさにポイントでありまして、そこが、日本が今回の交渉の中でいかに有利な交渉ができるかというところになるわけですが、皆さんもご記憶のように、小泉さんは電撃的な訪朝を果たして、6者協議というものを立ち上げました。この6者協議は日本が主導してつくった枠組みです。

 あのときは、むしろ日本が主体的に6者という枠組みをつくって拉致問題、あるいは核ミサイル問題で交渉した。ですが、今回は、日本はバスに乗り遅れている。それがいいか悪いかは別として、現状では乗り遅れている。そして、韓国の文在寅大統領と金正恩委員長の、南北首脳会談の際にも、その合意文書に、今後の協議はアメリカ、北朝鮮、韓国という3カ国、あるいは中国を含めた4カ国というふうに交渉の枠組みを明記しております。


 こういうことからすると、今、一足飛びに6者の協議が立ち上がって、そこに日本も積極的にかんでいくという可能性は非常に低いのではないかと思います。


 3者、4者で枠組みを固めた後、日本だけが入って5者になるのか、日本だけは入りにくいので、ロシアも巻き込んだ上で6者という形でやるのか。国連安保理との関係もあって、ロシアも含めた議論をしなければいけないので、最後は6者になると思いますけれども、肝心なのは、立ち上がりの協議がどういう枠組みかということになりますが、日本がそこに入り込むのは難しいのではないかと思っております。


【会場から】 安倍総理は日朝交渉で忌避されるんじゃないかという疑問があるんですけれども。

【佐藤】 日朝交渉をするに当たって、北朝鮮に対して非常に強い姿勢を示してきた安倍総理がどういう手腕を発揮するかというのは、問われるところだと思います。

 この見方には二つあって、今まで拉致問題、核の問題を含めて、北朝鮮に対してはかなり強い姿勢を示してきた。それが、妥協も必要な交渉の過程に入っていったとき、安倍総理が自分のハードルを下げられるのか、下げたときに世論はどうなるのかというところで、安倍総理は下りられない、交渉はできないという見方が一方にはあります。


 もう一方では、日韓の慰安婦合意を見てみろと、安倍総理は右の政治家と言われているけれども、安倍総理が日韓の慰安婦で合意に持ち込んだから、右の人を抑えることができた、安倍総理がやったから右から不満が出なかった。だから、今回の北朝鮮とも、右を抑えて、安倍総理は柔軟に対応できるのだという見方もある。


 この二つの見方があると思いますけれども、私は、前者ではないかなと思います。そういう意味で、トランプ大統領と金正恩氏の交渉が進んでいけば、いくほど、日本としては厳しい状況に追い込まれる。日本というよりは、安倍総理の立ち位置として難しい状況に置かれるのではないかなと思っております。


佐藤武嗣(さとう たけつぐ)
1993年、朝日新聞入社。政治部記者として防衛省や外務省、内閣官房、首相官邸キャップ、与党キャップを経て政治部次長。米ジョージタウン大学、米国防大学で客員研究員。2015年からワシントン特派員、米大統領選キャップを務めた。2017年秋から現職。
(構成 湯浅好範)